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YASMEEN ヤスミン 店長日誌::スリランカ YASMEEN キトゥル・レポート

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スリランカ YASMEEN キトゥル・レポート
Kotmalemap.jpgKotmalemap2.jpgTravelpost.comより

スリランカ中央高地の紅茶の街Hattonハトゥンから、やはり紅茶の銘柄で有名な街Kotmaleコトゥマーレまでは、辺鄙な山道をおよそ北へ40Km強。賑やかで様々な店の並ぶコトゥマーレを抜けると再び両サイドを木々に覆われた狭い山道になり、分岐点ごとに人に聞きながら進んでゆきます。
道路がよくないので、体が浮くほど車がガタつくうえに山道の端が時折崖っぷちでガードレールもないため、大変緊張しながら進みました。しかし景色は絶景で、スリランカの多様な地形や自然に改めて感嘆します。
zekkei.jpg大変高い場所まで来た。とても眺めが美しい。

キトゥル・ハニーの採れる「The Kithul palm キトゥルパーム」は高温多湿の場所で育つ椰子ですが、スリランカ高地の比較的涼しい(夜に12度くらいまで気温が下がるところも)場所にも自生しています。車で走っているとあちこちに見かけるのですが、数珠の束がぶら下がったような独特なシルエットをしているのですぐにわかります。

何度も人に道を聞きながら、山奥の村に辿り着くとそこは本当に小さな4~5件の売店の並んだ道沿いの集落であり、人も少なくどことなく寂しい雰囲気がありましたが 我々が車から出ると、キトゥルを採取してくれるシシラァさん、そして村の住民で科学技術庁の管轄のITI(Industrial Technology Institute)の協力を得て村でキトゥルの量産化を進めているスタッフの皆さんらが出迎えてくれました。集落の中心に、白いコンクリート造りの平屋の建物があり頑丈な錠前がかかっていて、中には大きな鍋のような機械と、きれいに積まれて保管された空の瓶。ここが工場のようでしたが、ITIの資金で購入されたこの機械を動かす電力が村になく今は使えないのだということ。代わりにガスを使用し、大きな鍋で瓶を煮沸消毒し、キトゥルを漉して煮詰めるという従来の方法で作られることになりました。

machine.jpg 張り子の虎になっていた機械。そのうち電力を増やすらしい。

製造に取り掛かる前に、キトゥルを実際採取するところを見せてもらうことにし、我々はシシラァさんについて行って村はずれの森の中のほうへ向かいました。村はずれの森の奥は民家が2件ほどあり自給自足に近い生活をされており、庭にコーヒー豆を干していたり、機を織って布地を作ってらっしゃいました。
hataori.jpg 機織りの道具。スリランカではよく見る。
足元の危うい道を慎重に進みながら私と社長とマイクさんはずんずん進むシシラァさんの後を追います。やがて見晴らしの良い場所に出るとシシラァさんはもういつの間にか、遠くのキトゥルの木に登っており、その頂の花に結わえつけられたポットを取り外し、またスルスルと降りてポットを持ってきてくれました。

sisira.jpgbottle.jpg
シシラァさんの雄姿。ちょっと「世界ふしぎ発見」を思い出した。。。

キトゥルというと私は、薄茶色のトロッとした糖蜜を予想していたのですが、ポットに入っていたものは澄んだ色のジュースのような花の蜜でした。後で少し飲ませていただいたのですがとろみはなく、キングココナッツを割って飲むジュースをもっとフルーティーにしたようなさっぱりした味。ちょっとライチの味にも似ているかんじ。(このままでも十分美味しかったです)
これがキトゥル・ハニーに?

kithulwater.jpgこれがキトゥルの花の蜜。とてもおいしい!

シシラァさんが次に、別のキトゥルの木に登ってまるで育ちすぎた竹の子のような形の実のように見える部分を、鉈を使って丁寧に1枚1枚皮を取り除き始めました。先端を鉈でスッとシシラァさんが切ると、ちょろちょろと水がこぼれました。あれは花の蜜?
するとやがて中から孔雀の羽根のような真っ白なキトゥルの新しい花が現れたのです。

kithulflower.jpgこれぞキトゥルの花!

珍しい貴重な光景に社長ちょっと興奮。シシラァさんは、木から降りると木に両手を合わせてお祈りされました。
「今の見たかい?」と社長が言いました。「ちゃんとお祈りして登るんだよ」。


村に戻り、寄り道して工場の隣にある機織りの作業場を見学。昔ながらのやり方で、村の女性たちが綿の糸を織っていました。主にベッドシーツや枕カバーなどの生活用品が作られており、町に出荷されます。綿は染料で染められた糸をインドから輸入し、スリランカで加工されることが多く、やはりここもインドの綿を使用していました。大変色が鮮やかで美しく、私もベッドシーツをその場で1枚500ルピー(だいたい約520円くらい)で購入。肌触りが滑らかで色使いもとても気に入って、あとから他の柄も買っておけばよかったと後悔。ここの機織り工場は、キトゥルを除けばこの村のほぼ唯一の産業のようでした。

hataori3.jpghataori2.jpg
足で踏んでリズミカルに機を織っていく。目にもとまらぬ速さです。

小さなキトゥルの工場に戻り、ついにキトゥル・ハニー作りです。大きな鍋で私達が持参した瓶とキャップを煮沸消毒。ITIの定めた方法ですべて行うようになっているために、煮沸の時間なども指定されています。煮沸消毒した瓶をていねいに別の鍋に移し、今度はキトゥルの蜜を鍋で熱し始めます。この間休むことなく蜜をゆっくり攪拌し続けないといけません。やがてグラグラと煮立ってくると、部屋中に甘い香りが漂って、何とも幸せ。

kithl3.jpg
kithul4.jpg
攪拌中は手を止められない。

ガスの火力を調整して、次にキトゥルが酸性かアルカリ性かを測るためpH(ペーハー)を調べます。7の中性の値になるのが望ましいため煮詰めながら少しずつ何度も特別な機械で計測します。
このあたりから、何だか学校の家庭科の授業のようになり、瓶詰めの段階になると社長もマイクさんも私も手を洗って、流れ作業で一気に瓶詰めし一斉に終わらせました。
キトゥルの花の蜜20リットルから、だいたい5リットルのキトゥル・ハニーが作られます。この日の作業は250ml入りの瓶48本でおよそ2時間かかりました。

ph.jpgnagaresagyo.jpg
最初のころはにこにこしながらやっていたけど、段々マジ顔に。みんなかなり本気。

私が気になったのは、瓶詰したキトゥル・ハニーの色が茶色いことでした。
以前私が社長から「ITIの保証する最高のキトゥル」と言われて小瓶で渡されたキトゥル・ハニーは口に入れると鼻から抜けるような「松のような」良い香りがして美味であり、そして色は澄んだ琥珀色をしていました。全く濁っておらず、それまで見たどこのキトゥルの色とも違っていたので、今回作ったキトゥルがそうでなかったのが残念で「澄んだ色にはなりませんか?」とスタッフに伺うと、「その日の朝採ったキトゥルをすぐ瓶詰めすれば澄んだ色になります。今回のキトゥルは昨日集めた蜜だったので澄んだ色はさほど出ないですが、熱が冷めるともっと薄い色になります。味に影響ありません」。
今度からは澄んだキトゥル・ハニーを作るのを目指そうと心に決めて、皆さんと握手して熱々のキトゥル・ハニーをpickupして帰路につきました。


これまで何度も出てきたITIという機関は、コロンボ市内に本部を置く政府所有の研究施設であり、科学技術庁の管轄であり、日本でいうところの厚生労働省のような役割も果たしています。スリランカ国内で法人活動をしている団体はITIを避けては通れないと言っても過言ではありません。小難しいので例えて言うと、ロールプレイングゲームにおける『お城』のような場所であり、ここで人に話を聞いて情報をあつめ、書類をもらい、キーアイテムを見つけないと先のステージに進めないのです。私たちもそのようにして今回コトゥマーレに辿り着いたのでした。
ITIは分野ごとに全て細かくセクションが分けられ、ハーバルプロダクトは向こう、エッセンシャルオイルはあそこ、果物はあっち、という風に担当官が決まっており、彼らの情報を得るために何度も何度も足を運ぶことになり、何度も何度も電話してメールする必要があります。
そのITIの中のFood Technology sectionフードテクノロジーセクションが主導して進めてきた『Kithul Productキトゥル・プロダクト』は基金を設けられ一昨年から本格的な活動をしています。
それまでもキトゥル・ハニーは大手食品会社によって大量生産されてきましたが常温で長期保存に耐えるために加糖されたものであり、ほとんど全てがキトゥルのみから作られるものではありませんでした。キトゥルは実は足が早い食品であり、手作りで砂糖を混ぜずに煮詰めると、上手くやらなければ1か月、きちんと作って3か月、そしてバクテリアをしっかり殺して煮詰めれば半年と言われています。
ここで問題になるのが輸出市場であり、マーケティングに関してはずいぶん遅れをとっているスリランカ国外におけるキトゥルの知名度の低さです。
重い瓶に入ったものを安価で運ぶには船で送るのが最も現実的ですが、数か月を運送でロスし、しかも知名度の低い食品を残り少ない賞味期限内で売るリスクを企業は決してとらないでしょう。

Canada.jpgkithul.jpg

ITIやその上の政府が最も意識しており、色々なレポートでも述べているのがカナダのメープルシロップとの比較であり、キトゥルのもたらすかもしれない経済効果です。
しかし今のところ、大中小様々なキトゥルを扱う、あるいは扱おうとする会社や個人がバラバラに動いているだけで、一致団結して世界的に広めていこうとする戦略のようなものは全く見られません。
キトゥルについて調べれば、多くの情報は欧米から発信されており、世界に向けて解りやくすスリランカのキトゥルについてレポートしようとしているのはスリランカに住む人ではなく欧州の人なのです。昔この国にやってきた多くの外国人はスリランカを楽園と思いましたが、さらにもっと多くの人はここを金山だと感じて、今も沢山の外国人がビジネスチャンスを伺っています。

大量生産が始まっても、キトゥルにはまだ夢がある。スリランカに私が来た頃社長は神妙な顔で「君はこんな話は馬鹿にするかも知れないけど」と前置きしある話をしてくれました。

”キトゥルの木には心があって、木が登る人を嫌うと蜜を出さなくなる。
だから木に登る人はこうやって手を合わせてお祈りするよ。”

シシラァさんのように子供の頃からキトゥルを採る仕事をしているひとたちは、古代より続けられていた技術を親御さんから伝授されて、キトゥルと共に生きてきました。
このエピソードがなかったら、私達はキトゥルを作りに行かなかったかもしれません。

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