YASMEEN特別企画 スリランカバティックで北斎『八方睨み鳳凰図』 |
バティック作家のKHANTI女史が北インド的題材を奇をてらうことなく生き生きと描いてくれたのを見て、新たなものに挑戦する勇気を得たような気がします。
そこでKHANTIさんに、日本画の題材を染めていただいたらどんなものが出来るだろうかと頼んでみることにしました。それが下の葛飾北斎 作『八方睨み鳳凰図』です。
原画は長野の岩松院の天井にあります。北斎の晩年89歳に描かれたものと伝えられ、老いてなお輝きを増し続けた北斎の傑作。
絵に描かれているものの説明をまずする必要がありましたが、幸いインド神話をルーツに持つスリランカには神の鳥という概念があり、バティックなどにもたびたび表現されていて私たち日本人が親しんできた鳳凰の姿と近しい姿をしていました。そのため「これは神の鳥です」と言うだけで代替理解していただけたのでした。バティックに描かれる鳳凰の多くが、フェニックス型の燃えるような「火の鳥」で、ついつい手塚治虫氏の漫画を連想してしまいます。
こんな可愛い鳳凰のバティックも。
これなんかまさに「火の鳥」!
北斎の鳳凰は実際のクジャクに似ているのでスリランカの人が見たら「モナラ(クジャク)」と思われてしまうと思ったため、まず最初に「これはクジャクではありません。日本の神の鳥はクジャクに似せて描かれたのですがクジャクとは違うものです」と念を押しておきました。
「この鳥の恰好はどうなっているの?」と聞かれたので自分自身でちょっと再現。両手を広げて「こう羽を広げてですね、ぐるっと尾が回り込んでいるんです。ぐるっと」と本当かどうか自分でも疑わしいまま、もっともらしく説明。隣で頑張ってシンハラ語に訳す社長。KHANTIさんは写真を見ながら、すでに頭の中で染め色のレイヤー分けをイメージしているようでした。
完璧とは言えないディスカッションの3週間後に出来上がったものは、色も姿も本物に出来るだけ忠実にしようとしてくれたスリランカバティックの『八方睨み鳳凰図』でした。画狂人北斎に縁もゆかりもないセイロン島のバティック作家が、小さい原画の写真だけを頼りにぶつかってくれた作品として、その出来とは別に意味深いものになったと思っています。
バティック『八方睨み鳳凰図』は日本のイベントで機会あるときに展示したいと思っています。
9月の茅ヶ崎のイベントにバティックを沢山展示予定です!